はかますたいる!きょろの技的雑記

井上恭輔(@kyoro353)の私的かつ技的な日記です。米国サンフランシスコで暮らすエンジニアです。

全ての個人開発者に読んでほしいスタートアップの教科書「リーン・スタートアップ」の日本語版が出るらしい!

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 アメリカでfluxflexの開発に参加していたとき、スタートアップをやる上で最も多くの学びを与えてくれた、いわば”スタートアップの教科書”「The Lean Startup」の日本語版が4/16に出るらしい!

 今までソフトウェアの開発手法に関しては「アジャイル」だの「プロトタイプモデリング」だの、色々とノウハウやナレッジが生まれてきては話題になっていた。しかし、個人的には「で、結局それらを使ってどうやってビジネスをしたり、サービスを運営すればいいの?」という、事業主として(またはプロジェクトを運営する個人開発者として)どうオペレーションを回していけばいいのか、という点に関しては、結局のところ良い答えや、見習うべきモデルや、テンプレートが全く分からないままだった。そんな自分に、ある1つの解を与えてくれたのが、この「リーン・スタートアップ」だ。

リーン・スタートアップのリーン(lean)とは、英語で「〔人や動物が〕ぜい肉の取れた、体が締まった、痩せた」という意味だ。この本では、極限まで必要最小限にそぎ落としたスタートアップを生み出すには、どういうオペレーションを回していけばいいかというノウハウについてまとめられている。

この本で大切にされているポイントはいくつかあるのだが、個人的に重きを置いているなと思うのは「MVPを生み出す事」「検証可能性があるものはどこまでも検証すること」「イテレーションをとにかく短くし、検証から学び改善することを怠らない事」という事だと思う。

その中から、MVPとは何かということについて今回は話そうと思う。

MVPというのは「Minimum Viable product」の略で、市場ニーズを迅速に検証できる最低要件の小さなプロダクトという意味だ。何か新しいプロダクトを生み出そうとしたとき、そのプロダクトが結局顧客のニーズに合っているかとか、新しい価値を創造できているかというのは、はっきり言って結果論でしかなく、やってみないとわからない事が多い。たとえば数億円の社運をかけたビックプロジェクトをドカンと投下したものの、全く当たらず響かず、大コケするなんてことは、実際にすごく多い事例だ。これが体力のある会社だったら、まぁ高い勉強料ってことになるのだろうけど、小さなスタートアップや個人開発者にとっては1回のチャレンジで人生が詰んでしまう大変な問題だ。

そこで、今自分たちが創造したいと思っている価値の最小単位まで機能を削ぎ落としたプロダクトを作り、それが市場に受け入れられるか実際にリリースしながら検証(Validation)し、鉱脈を掘るまで何度も何度もイテレーションを回して、ピボットを繰り返すことで、成功の確度を高めようと言うものだ。

このとき、MVPというものとプロトタイプやベータ版なんかがごちゃごちゃに日本では訳されて取り扱われている感じがするけど、実際にはMVPはそれらとは別のものだ。

MVPのM(ミニマム)は機能要件を絞ったプログラムという意味のMではなく、ビジネスやサービスとしてのMという意味である。つまり、必要最低限の機能やビジネスモデルが通っている必要があって、たとえば課金モデルが前提のサービスであれば「その最低限の機能に対してユーザがお金を支払うか」という仮説まで含めてMなわけなので、課金の実装もしっかり行い、お金もユーザから取らなければ、ちゃんとしたMVPではないし、仮説の検証は出来ない。

fluxflexで良く話していたのは、MVPとは、大きな製品の1部分から段階的につくる事(プロトタイプ)ではなく、小さな完成された結晶を生み出す作業だということ。

どんなに小さくてもいいので、まずはビジネスとして完結した小さな結晶を生み出す事に全力になる必要がある。そして、そのプロダクトの世界観をしっかり生み出す事ができれば、あとは物量を投下して結晶を徐々に大きくしていけばいいのだと俺は考えている。

 長々と語ってしまったが、これだけでは伝えられない様々なスタートアップのノウハウがこの1冊に集約されている。

全ての個人開発者とプロダクト生産者に読んでほしい教科書が、このリーンスタートアップだ。英語版しかなかったときは僕も苦しみながら、ちょっとずつ摘み読みをして、ネイティブレベルの英語力のメンバーに補足してもらいながら理解を深めていた。そんな読み方でも、圧倒的に得られるものが多い1冊だった。ただ、本当に良書なのだが、残念ながら洋書なので、全ての友人に読んで!とお願いするのはさすがに気が引けた。こんなとき、このタイミングで日本語版が出るのはとてもうれしい。旨を張って、すべての人にお勧めしたい。

僕ももう一度、日本語で読み直してみようと思う。