はかますたいる!きょろの技的雑記

井上恭輔(@kyoro353)の私的かつ技的な日記です。米国サンフランシスコで暮らすエンジニアです。

株式会社ミクシィを寿退職しました

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本記事は「寿退職」エントリーです。

少し前の事で恐縮ですが、本年3月5日(巫女の日!)にサンフランシスコ市庁舎にて、はとねさん(@hatone)と結婚し、晴れてco-founderとして新しい家庭をスタートアップすることになりました。また、それに伴いまして、新卒入社から6年2ヶ月勤めた株式会社ミクシィを卒業して、はとねさんの勤務地であるシリコンバレーに本格的に移住することにしました。

退職エントリーに関しては諸説あるので「別に書かなくても大丈夫??」なんて気軽に思っていたのですが、実際には皆様にご報告しておかないと、実生活で結構色々と大変…というか、せっかくミクシィやお仕事の関係のお話を頂いてもお答えすることができず、申し訳ないと思う機会が日々増えてきましたので、この機会にきちんとご報告させて頂きたいと思います。

在職中は社内外問わず、オンでもオフでも本当に沢山の皆様にお世話になりました。 本当にありがとうございました。

では、良い人生の転換点でもありますので、この機会にミクシィでの生活を振り返ってみようと思います。

2008年のウェブ業界

私は、2008年4月に株式会社ミクシィの新卒採用第1期生として入社しました。

当時は「Web2.0かっこわらい」なんて言葉が出始めた時代。今も昔も言葉そのものは「かっこわらい」以外の何物でもないのですが、全ての人がネットを介して繋がり、サービス同士もどんどん繋がり、お互いが様々な情報をリアルタイムで交換する「単なるデータベース」では無いインターネットが始まりつつある時代でした。

まだFacebookTwitterもまだ日本語版はありません。(追記:デジガレと組んでTwitter日本語版が始まったのが4月23日なので、これは入社前後の話。誤解を招く表現でごめんなさい) YouTubeGoogleに買収される前で、スマホと言えば感圧式タッチパネルにWindowsCE、多くの人が家ではTrident、外ではNetFrontレンダリングされたWebを使っていました。そんな時代に何が出来るか、何をすべきか、まだ私を含め多くの人は答えを出せてはいませんでしたが、来るべき時代の夜明けを感じ、その未来にWebに関わる多くの人が希望を抱き、心を踊らせて色んな挑戦をしていたような気がします。

当時の僕が作ったパワポには「数年後の世界」としてこんな事が書いてありました。

  • 他人との距離は、ネットでもっともっと近くなる。他人の体温をネットで感じる。

  • ソーシャルなんて形はどうあれ、空気のように当たり前になる

  • 道行く人々全てにIPアドレスが振られ、リアルタイムでコミュニケーションするのが普通になる

スマホが当たり前の今ではどれも当然の事ですが、たった6年前の自分にとっては「作りたい明日」だったのです。 ふと振り返ると、何でもないようなこの業界の日々の変化というのは、実は凄く大きい物なんだなと再認識させられます。 また同時に、自分が夢見ていた時代がちゃんと来た事をすごく嬉しく思っています。

ミクシィでやったこと

ミクシィでは本当に多くの仕事を担当しました。最初の仕事はヘルプシステムの改修、その後にコミュニティやレビューなど、コミュニケーション関係のサービスの開発やリニューアルを多く担当しました。フォトサービスのリニューアルではバックエンドからフロントエンドまで大部分のコードを書き直しました。「ミクシィ(笑)」といつも馬鹿にされるサービスですが、それでも当時のトラフィックは大きく、時に悩み、時に苦しみつつも、本当に楽しくてやり甲斐のある仕事でした。優秀なエンジニアに囲まれて、ビビりながらも多くを学べたのも良い体験でした。

会社員の身分で結構自由に何でもやらせてもらえたの本当に良い経験で、公式ブログで萌えオンラインコーヒーポット「萌香」たんのハードウェアハックを実名で公開したり、「Web2.0中の人ナイト」というライブイベントを色んなベンチャー企業の中の人を集めてやったり、個人で作ったNFCを使った趣味サービス「Taglet」を絡めて会社でサービスを作ってTechCruchに載せてもらったり、記事の執筆でも勉強会でも外部講演でも、いつも社名を背負って好き勝手に色々やらせてもらいました。

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4年目には「ちょっとアメリカ行ってくる」みたいな無茶なノリで、ミクシィに籍を置きながら1年間シリコンバレーのスタートアップ「fluxflex」に旅に出させてもらいました。ビジネスの立ち上げやファイナンスなど、スタートアップを日常を経験する中で「0を1にする仕事、新規事業の立ち上げは本当に面白い!」と、心から思うようになりました。また「面白さ」という価値観も、単に目立つ一発ネタではなく、ちゃんとした社会への影響と持続性を持って初めて成し得るもの、というふうに価値観や人生観が変わりました。技術だけでなく、ファイナンスを含めて興味を持って実践し始める良い機会になりました。

帰国してミクシィに復帰してからは、イノベーションセンターの立ち上げから、一貫して新規事業に取り組みました。どうせやるなら、海外のマーケットに対してもアプローチできる事業が面白いと考え、言語の壁を超えやすい「開発者支援」「バックエンド」という事業領域に対して、ミクシィの開発基盤を元にした「DeployGate」というスマホ開発者向けのテストプラットフォームを作って挑戦を挑みました。 DeployGateはおかげさまで93カ国以上で使ってもらえるサービスに成長し、75%以上が海外ユーザという自分の作ったサービスの中では初めてのグローバルなプロダクトになりました。 イノベーションセンターでは他にもPoPollyを初めとした様々なプロトタイプの開発を行いました。世に出たもの、出なかったもの共に沢山ありますが、ビジネスを含めて仮説を立て、次から次へとモノを作って世の中にぶつけて検証して行く作業は、本当に楽しい仕事でした。

在職中、経営の方では色々と変化も多かったミクシィでの6年間でしたが、 今思い返せば、何だかんだで有意義で、心から楽しかった素敵な経験だったと思います。 社内外問わず、良い人達に出会えて、一緒に良い仕事が出来て本当に幸せでした。

これから何するの?

現在は退職手続きも終わり、ベイエリアのSan Brunoに家を借りて妻と一緒に暮らしています。

新婚早々、無職にジョブチェンジという大変問題な状況ではあるのですが、このような状況に理解を示し、次の挑戦に向けて応援してくれている妻に心から感謝を伝えたいと思います。(本当にありがとう!)

これから取り組みたいと考えているのは、Webとスマホでやってきた技術を使って、フィジカルな世界の社会的問題を解決するという事です。 あくまで個人的な想いなのですが、自分としては「バーチャルの世界は結構十分やり切った」という感覚を持っています。 今まで、私達はWebの世界、スマホの世界と技術を持って色々な課題を解決して来ました。 まだまだWebもアプリも使いやすいものへと進化を続けていくと思いますが、それ以上に、この世界には画面から出てこないと解決できない問題があまりにも多すぎます。

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また、2008年のWeb業界と同じように、Maker’s MovementやIoT(Internet of Things)/IoE(Internet Everythig)と呼ばれる世界で、確実に変化が起こりつつあると言うのをベイエリアにいると肌で感じるという事があります。実際のところ、現段階では「作ってみた」以上のものではないかもしれませんが、明らかにノウハウがたまって「小慣れて」きており、もはやビジネスや問題解決を実現する1つの手段として十分に戦えるレベルに成熟してきていると感じます。それはまるで、単なるデータベースであったインターネットが、コミュニケーションプラットフォームに姿を変えていく過程を追体験しているようです。 今年1月にラスベガスのIoTハッカソンで優勝して自信を得たというのも大きいのですが、2009年の萌香たん以降、5年近く趣味でやってきたハードウェア分野での興味を、そろそろ仕事として実戦に移してもいい頃なんじゃないかと考えています。

食、物流、商流、決済、安全、などなど、今までWeb&スマホエンジニアが培ったネット技術やUXのノウハウを用いれば、ちょっとしたハックでもっと便利に、もっと素敵になる事は山のようにあります。次はそういった事業領域に、身を投じてみたいなと考えています。 今、少しずつではありますが準備を進めていますので、お知らせできる段階になりましたら改めてご報告させて頂きたいと思います。

最後に

サンフランシスコで入籍しましたが、結婚式&披露宴は日本でやる予定なので、皆様よろしくお願いします!

それでは、何か面白いお話がありましたら、いつでもお気軽にご連絡下さい。 今後とも、どうぞ宜しくお願いいたします。

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